サクラフィフティーン女子日本代表のラグビーワールドカップ2025へ向けた戦いが、5月22日から6月1日まで香港で行われるアジアチャンピオンシップ2024で始まった。アジアタイトル連覇で2025年イングランド大会と今季WXV2の出場権獲得を目指す日本のレスリー・マッケンジーヘッドコーチは、「2023年よりも、ずっと前進している」と、この1年での積み上げに手ごたえを覚えている。
日本は昨年5月にアルマトイで行われたアジアチャンピオンシップで優勝してWXVへの出場権を獲得。昨年10月開催のWXV2でイタリア、サモア、スコットランドと対戦して1勝2敗の結果を手にした。そのWXVへ向けてはスペインやイタリア遠征を含めて国内外での試合を行い、準備を重ねた。
今回のアジアチャンピオンシップは、日本にとっては昨年のWXV以来の公式戦となるが、マッケンジーヘッドコーチは昨年の経験で得たものが大きく、チームの成長の糧となっていると話す。
「我々は昨年のこの時期よりもずっと良い準備状況にある。特にケープタウンでのWXV2を経験したことは、まだ若く成長過程にある我々のチームにとって本当にとても有益だった」
昨年から導入された3ディヴィジョン制の女子国際大会であるWXVは、高い強度のテストマッチを定期的に体験できる機会が限られる日本にとって、実戦経験を増やしてプレーレベルを上げる上で重要な役割を果たすとして貴重な機会だ。
それだけに、アジアチャンピオンシップで来年のワールドカップだけでなく、今季のWXV2への出場権を確保することは、2025年イングランド大会で前回ワールドカップ以上の成績を上げることを目標にしている女子日本代表にとって重要な意味を持つ。
マッケンジーヘッドコーチは、「自分たちのスタンダードとして、試合のすべての要素でコントロールすることを求めているので、今大会では試合の勝敗以上に、多くの時間をかけて強化してきた部分で相手と違いを見せられるか、そこがポイントだと思っている」と語る。
女子日本代表は今年に入るとコーチ陣の陣容もパワーアップ。オーストラリア代表やトンガ代表をはじめ、フランスやイングランドなどでもコーチを務めたマーク・ベイクウェルFWコーチを招聘し、3月からFWを中心にした国内合宿で強化を繰り返してきた。
また、5月13日からのチーム全体合宿には、元オーストラリア代表や埼玉ワイルドナイツのSOとして活躍したベリック・バーンズがBKコーチとして合流。切り替えや展開などの動きを精力的に指導し、調整を図ってきている。
すべては来年のRWCへ
「昨年はチームが一年を通して勢いを得た点では元気をもらったが、同時に厳しい教訓もあって、特に1年の後半では国内での試合と準備方法の面で欠けているものが明らかになった」と日本代表指揮官は言う。
「それで、ここ2ヶ月は大柄なFWの選手を集めて鍛えることをやってきた。より大きく、より強く、よりパワフルになる必要があるし、もっと冷静で客観的になる必要があると学んだからだ。すべては、来年のワールドカップで自分たちがどうなっていたいかというビジョンによるものだ」
「最初のワールドカップというものは、誰しも経験することで多くの教訓を得るが、2度目のワールドカップではそこから適応を図る機会になる。それをこのグループとともにできることに本当にワクワクしている」と語る。
今回の香港遠征メンバーには香川メレ優愛ハヴィリ、小島晴菜、妹尾安南、町田美陽というノンキャップ選手4人を招集した。指揮官には、経験の機会を与えることでチームの底上げにつながるという期待がある。
「女子代表の環境を経験してクラブや大学のレベルとの違いを感じることは、彼女たちにとって次へのステップアップにつながるし、私も彼女たちの成長度合いや現在地を見ることができる。高校からクラブ、大学で非常に良いタレントが出てきているので、彼女たちを呼んで次のステップを体感して(代表入りの)資格を与える良い機会だと捉えている」とマッケンジーヘッドコーチは言う。
今回対戦するホンコン・チャイナとは日本が2戦2勝した2017年大会以来の対戦で、マッケンジー体制では初顔合わせとなったが、日本が29-12で勝利した。2戦目に対戦するカザフスタンとは昨年の決勝で日本が72-0で圧勝し、その試合を経験したメンバー16人が今回の遠征メンバーに登録されている。
アジアの発展への支援
マッケンジーヘッドコーチは、また、アジアの現状にも言及。日本が支援することで競技の発展につながると語る。実際に、今回の香港遠征前の合宿期間中にはホンコン・チャイナが来日して、合同練習を行っている。
マッケンジー女子日本代表ヘッドコーチは、「日本は2017年ワールドカップに出場したおかげで、2019年から私が日本代表指揮官としてフルタイムで関わることができている。ホンコン・チャイナは7人制の文化もあり、15人制を推し進めようとしていて、カザフスタンもワールドカップに出場していた歴史がある」とアジアの潜在能力を指摘する。
「しかし現実には、女子競技が世界的に急成長している中で競技力を保つために適切なリソースを投じることが難しい。日本は恵まれている部分があるからこそ、今回の香港との2日間の合同練習のように、彼らの成長をサポートすることができればと考えている。それは私たちの義務でもあり、同時にメンタル面でのテストでもあると思っている」と語った。
そこには、地域の競技性が上がることで、日本のさらなるレベルアップにつながるという期待が滲む。RWC 2025だけでなくその先の女子ラグビーの発展へ、サクラフィフティーン指揮官とチームは着々と歩みを進めている。