大きなインパクトを与えたラグビーワールドカップ2023の真の勝利者、フランス
昨年フランスで開催されたラグビーワールドカップ2023の勝者は南アフリカだけではなかった。フランスのスポーツ省が委託し、EYがまとめた影響調査によると、男子ラグビーのフラッグシップイベントである第10回ラグビーワールドカップは、18億ユーロの消費と8億7,100万ユーロの開催国への純経済効果をもたらした。
他のメジャー国際スポーツイベントと同等の手法で3つの主要な影響(経済、社会、環境)を評価したこの包括的な報告書では、開催国の経済活性化や、積極的な社会変革の促進、国際大会で生じる二酸化炭素排出量の削減など、ラグビーワールドカップがもたらした明確な開催メリットについて詳細に分析している。
報告書には次のようなハイライトが含まれている:
- ラグビーワールドカップ2023は、フランス経済に8億7,100万ユーロの正味貢献を果たし、消費総額は18億ユーロに達した
- 425,000人の外国人観光客(72%がヨーロッパからの観光客)がフランスに平均10日間滞在し、1日170ユーロを消費
- 警備やスタジアム、ファンゾーンへの推定公的資金(7000万ユーロ)は、イベントによる税収(8400万ユーロ)で賄われ、RWC2023はフランス国家にとって魅力的な投資事業となった
- 総観客消費額の39%が開催都市以外の地域社会に貢献し、France 2023の全国的な好影響を示した
- 観戦客の98%がフランスでの滞在に満足し、82%が再訪を希望しているなど、中期的な観光振興におけるラグビーワールドカップの魅力が浮き彫りになった
- 2023年2月から2024年2月にかけて、フランス国内での選手登録数が12%増加し、ラグビーワールドカップの「効果」が顕著に
- EYによれば、フランス2023の社会的プログラムで16万人が直接受益者となり、クラス最高のプログラムとなった
- RWC2023の総カーボン・フットプリントは、CO2換算で83万トンとなり、その86パーセントがフランス国外からの来場者の移動によるものだった(スコープ3排出量)
- 既存施設を利用したこと、公共交通インフラと低炭素モビリティ計画に重点的に取り組んだことで、全体的な環境負荷を軽減
- 主要なスコープ3排出に関して責任共有アプローチをとったFrance 2023の炭素吸収プログラム
- から報告書の全文をダウンロード
ワールドラグビーのサー・ビル・ボーモント会長は次のように述べた。「ラグビーワールドカップ2023は、私たちのスポーツと価値を披露する素晴らしいショーケースとなり、そのポジティブなインパクトはフィールド・オブ・プレーにとどまらず、開催国、その国民、企業、社会、そしてより広い環境に多大な恩恵をもたらしたことを、私たちは大変嬉しく思っています。」
「ラグビーワールドカップを開催することの真の価値は、数字だけではなく、一体感、連帯感、情熱、そして何百万人ものファンにとっての生涯の思い出にあります。次回の女子と男子のラグビーワールドカップでは、この最高峰の大会をイングランド、オーストラリア、米国で開催するため、環境フットプリントという重要なテーマに慎重に取り組みながら、地域社会と経済に利益をもたらすこのポジティブな影響を維持し、強化するよう努めます。」
フランス2023のジャック・リヴォアール会長は次のように述べた。 「ラグビーワールドカップの旅が始まった当初からの私たちの野望は、フランスとラグビー界にポジティブなインパクトを残すことであり、同時に、将来に向けて新たなスタンダードを打ち立てる責任ある大会を開催することでした。」
「フランスとフランスの各都市に大きな経済効果をもたらし、素晴らしい社会的遺産とラグビー遺産を残すなど、大会関係者たち皆に対して素晴らしい結果をもたらすことができ、この影響報告書は、私たちのビジョンを達成したことを具体的に証明するものです。」
「ラグビーワールドカップ2023は、観客動員数、視聴者数、参加者数など、多くの面で記録的な大会となりました。私たちは、大会の環境フットプリントを制限し、軽減するための重要な対策を講じながら、この素晴らしい一体感の祭典を開催できたことを非常に誇りに思っています。」
フランス全土に恩恵をもたらした優良投資
フランス2023の経済効果は、10の開催都市と9つの試合会場にとどまらず、フランス全土の地域社会に恩恵をもたらし、このラグビーワールドカップをフランス全土を巻き込み、フランス全領土のための大会にするという約束を忠実に守った。総観光消費額の40%は、開催都市近郊の都市や村で記録し(記録的な160万泊の宿泊を含む)、このような規模の大会を開催することで、開催国全土においてローカル経済がいかに活性できるかを証明した。
ラグビーワールドカップ2023に参加するためにフランスを訪れた外国人観光客425,000人は、フランスに平均10日間滞在し、1日平均170ユーロを消費しました。彼らの半数は、スタジアムでの試合観戦に加え、ラグビーヴィレッジ(ファンゾーン)も訪れており、ラグビーワールドカップを最大限に満喫していた。
98%の観客がフランスでの滞在に満足し、82%がフランスへの再訪を希望している。海外からのファンは、開催国全体で合計420万泊の宿泊を予約し、宿泊部門に2億1900万ユーロをもたらした。
この報告書では、ラグビーワールドカップ2023とフランス2023の戦略により、5,200の雇用が創出されたと推定している。つまり、全サプライヤーと商業パートナーの90%がフランス企業であり、France 2023の運営経費のうち、外国企業に利益をもたらしたのは1%未満だった。
重要なのは、地方自治体(フランス政府、都市、メトロポリス)が負担したコストが7000万ユーロと、付加価値税と観光税で得た8400万ユーロの財政収入を下回ったことだ。
全体として、フランス経済への正味投入額は8億7,100万ユーロと推定され、そのうち6億9,000万ユーロは直接的な経済効果に起因している。この純経済効果は、フランス人ファンによる消費とフランス企業による大会への投資を除いたもの。これを考慮した上での計算方法に統合させると、ラグビー・ワードカップ2023の消費総額は18億ユーロに達する。
社会変革のための強力なツール
2ヶ月間、フランス全土がラグビーに熱狂し、フランスの年間テレビ視聴者数上位10番組のうち9つをFrance 2023が占め、大会期間中の累積視聴時間は4億8100万時間に達した。全試合を無料放送チャンネルで放送することで、開催国での視聴をしやすくしたことが功を奏した。
大会は主に開催国内のファンに恩恵をもたらした。48試合のうち少なくとも1試合を観戦した100万人のうち、59パーセントがフランス人だった。
少なくとも1試合を放送で観戦したフランス人の65パーセントのうち、40パーセントが初めてラグビーを観戦し、ラグビーのにわかファンの半数は女性だった。会場へ足を運んだ観客の25%以上が女性で、女性や女児の間でラグビー人気が高まっていることがわかる。 ラグビーワールドカップを体験した女性観客の82%が、ラグビーをプレーしてみたくなったと回答している。
フランス代表チームの人気急上昇と、大会期間中の51日間に国際的な選手たちが学校や病院、地元のラグビークラブを訪問したことが功を奏し、登録選手数が2023年2月から2024年2月にかけて12%増加した。
ラグビーは、一般市民が共感する価値を持ち続けているスポーツであり、調査対象となった全観戦者の84%がラグビーに対して良いイメージを持っており、多くのスポーツの平均的なイメージを上回っている。大会前および大会期間中に実施された意欲的なCSRプログラム、たとえば、ラグビー開発プロジェクトを資金面で支援する基金「Rugby au Coeur」(210のプロジェクト、150万ユーロを助成)や、ラグビーにおけるLGBTQI+コミュニティのインクルージョンを啓発するキャンペーン「Rugby is my Pride」は、いずれも高く評価され、大会のプラットフォームで宣伝されている。
全体として、16万人がラグビーワールドカップ2023のCSRプログラムから恩恵を受け、大会後も積極的な活動を継続するために、計画の中核的な部分が開催国協会に引き継がれた。
炭素排出を抑制する顕著な環境への取り組み
フランス2023は、2017年の最初の招致プロセス当時から環境への強い意欲を示してきており、54%の観客が大会主催者に環境への影響を削減することを期待していることからも、それが当然であったことがわかる。
フランススポーツ省が提供するメソドロジーとエコロジー移行庁(ADEME)のデータを用いて試算すると、大会全体で生じたカーボンフットプリントはCO2換算で83万トンと見積もられている。大会におけるカーボンフットプリントの大部分を占めるこれらの間接的な排出(スコープ3)は、世界中からラグビーファンが集まる大会であるラグビーワールドカップ2023によるものであり、温暖化ガス(GHG)排出量の86%が外国人客によるものだった。
このフットプリントは、UEFAユーロ2016大会(フランスが類似の会場を使って開催)と比較して3.4倍下回り、FIFAカタール2022ワールドカップに比べると4.4倍下回ると推定される。報告書で強調されているように、運営組織による変革的な取り組みがなければ、この総計はもっと大きくなっていた可能性がある。
大会運営において既存の施設やインフラを使用することは、排出量を可能な限り抑えるために重要なこととして、計画策定の早い段階で決定していた。この大会は、新規建設を一切必要とせず、パリのローラン・ギャロスにある国際放送センターとメディアセンターを含め、スタジアムからチームのベースキャンプまで、すべて既存の施設を利用している。
全排出量の94%を交通機関が占める中、フランス2023は、フランス国内のチームとファンのための低炭素モビリティ計画に重点を置いた。報告書は、参加チームが5時間半以内の移動はすべて電車かバスで移動することを決定したこと(全チームの走行距離の56%、つまり全移動の70%が電車とバスを利用)、フランス国内の移動と、開催都市内の移動に鉄道と公共交通機関の利用を重視したことなど、実施した施策を称賛している。
また、フランス国内および開催都市内を移動するファンには、鉄道や公共交通機関が重視されている。そのため、都市内におけるファンの移動の84%は、低炭素モビリティ(公共交通機関、徒歩、自転車)を利用している。これは、この種のモビリティを毎日利用しているフランス人の平均は39%であることから、ラグビーワールドカップがいかに行動の変化にポジティブな影響を与えているかを示している。
また、ワールドラグビーは世界中の視聴者が楽しめる魅力的なスペクタクルを生み出すホスト放送の運営を始め、二酸化炭素排出量を減らす統括団体としての取り組みも実施した。遠隔地での制作、トラック移動の最適化、地元クルーの起用など、すべてが二酸化炭素排出量を最小限に抑えるように設計されている。試合会場の二次発電機への給油には、菜種油から作られた100%バイオ燃料を使用し、従来の燃料に比べて64%の排出量削減を可能にした。
これ以上削減できない残りの炭素排出量については、大会が負担する排出量の一部を吸収するための炭素吸収プロジェクトを募集。France 2023が入札募集を開始した。このプログラムには、フランス2023、ワールドラグビー、リヨン市、その他のスポンサーを含む、さまざまな利害関係者が共同で資金を提供している。このプログラムを通じて、CO2換算で10万トンが吸収される見込みである。
メソドロジー(調査方法)
「ラグビーワールドカップ2023の経済・社会・環境への影響」調査は、EYフランスの専門家により、15,000人(観客13,000人、ボランティア1,700人、地元企業72社)を対象に行われたアンケート4つ、ラグビーワールドカップ関係者(開催都市、FFR、スポンサー、ラグビークラブ)への60以上のインタビュー、外部機関からの70の報告書を用いて実施した。