日本代表、ポルトガル戦で2年ぶりのテストマッチ勝利も反則の多さで苦戦
今秋の欧州遠征初戦でアイルランドに5-60の大敗を喫して一週間、ラグビーワールドカップ2023へチームづくりを進める日本代表は、世界19位のポルトガルとの対戦に国際経験の少ない顔ぶれを多く揃える先発で臨み、前半リードで終えながらも後半開始からペースを乱した。
前半早々、WTBシオサイア・フィフィタ選手のトライで先制したが、タフでハードワークを厭わないポルトガルが反撃。1トライ1PGで前半半ばに8-5のリードを許したが、その後はSO松田力也選手がハーフウェイライン付近からのロングショットを含むPG3本を決め、ハーフタイム前にはCTB中野将伍選手が抜け出してトライを奪い、自身の代表デビューに華を添えて、日本は21-11で前半を折り返した。
しかし、後半開始直後から日本は突然反則を繰り返し、試合中に修正が効かなかった。この日の反則数は15、後半だけで9を数え、しかも2枚のイエローカードが出される乱調ぶりだ。1枚目のカードは後半3分にFLリーチマイケル選手へ、2枚目は終盤36分に途中出場のPR中島イシレリ選手へ出されたもので、いずれもハイタックルで危険なプレーと判断された。
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— 日本ラグビーフットボール協会⚡女子11/14vsスコットランド (@JRFUMedia) November 13, 2021
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苦戦する日本に対して、2023年ワールドカップの欧州予選突破を狙うポルトガルは数的優位の時間帯を含めて2本のトライを奪い、後半半ばまでに25-28と3点差までに追い上げた。
その後、後半23分に松田選手がPGを決めて日本は31-25とリードを広げ、その直後にリザーブから5人を入れ替えて建て直しを図ったが、2枚目のイエローカードでチームは後半の長い時間を一人少ない中で戦った。
重苦しい雰囲気を一掃して勝利を決定づけたのは、試合終了直前に山中選手が相手のパスをインターセプトして抜け出し、インゴールまで一気に走り抜いてマークしたトライだった。松田選手がコンバージョンを成功させて日本が辛くも逃げ切った。
反則の繰り返し
苦戦の原因となった反則の多さはアイルランド戦でも見られた傾向だった。日本はコロナ禍の影響を受けて2020年には予定されたテストマッチ全てが中止となり、2019年日本大会後はこれが5試合目のテストマッチ。国際試合から遠ざかっていたブランクの影響か。
FL姫野和樹選手は、「自分たちのディシプリンが自分たちの首を絞めていた。」と話し、司令塔を務めた松田選手も「ペースを握れていた部分はたくさんあったと思うが、自分たちの規律の部分で相手にチャンスを与え、自分たちがプレッシャーを受ける形になった」と振り返った。勝利を決めるトライを決めた山中選手は、「規律の部分は課題。修正しないとティア1のチームには勝てない」と指摘した。
ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチは、「ポルトガルはしつこくタフなチームで、非常に良いプレーをしていた」と対戦相手のプレーを称賛。その上で、「ペナルティを重ねてしまえばチームとして立て直すのは難しい。3分の2が守備でのペナルティだった」と日本の改善点を指摘した。
若手のデビューと勝利の効果
一方で、指揮官はこの試合で代表初キャップを獲得した中野選手のプレーを評価。「とても良いプレーをしてくれた。ボールに触る機会は少なかったが、その中でもいいトライを決めた。ラインブレークやオフロード、多くのタックルもあった。今後の日本にとって期待できる内容だった」と話し、期待を示した。
その中野選手は、「ボールを持ったらゲインしようと考えて、アグレッシブに行けたところは良かった」と自身のデビュー戦を振り返り、「外側でゲインした時のオフロードの精度やボールキープの継続は、今後修正する必要があると感じた」と反省点も挙げていた。
ゲームキャプテンを務めたCTB中村亮土選手は、勝利そのものをプラス要素に挙げた。「勝って次に進むことは非常に大事。急に強くなるわけではない」として、毎週の積み重ねが重要という認識を示し、松田選手は、「アウェイのテストマッチという厳しい試合の中で勝つことができたのは成長を感じる」と話した。
日本の次戦は20日(土)。今遠征のラストマッチでスコットランド代表と対戦する。2019年大会のプール戦最終節で日本が28-21で競り勝って8強進出を決め、スコットランドはプール戦敗退となった一戦以来の顔合わせだ。
「チーム一丸となって勝って終わりたい」と姫野選手はそう言った。
ポルトガルHC,RWC2023予選へ手ごたえ
ラグビーワールドカップ2023フランス大会へ予選突破を目指しているポルトガルは、2007年大会以来の本大会出場権獲得へ、日本戦での出来に手ごたえを覚えているようだ。
チームを率いる元フランス代表のパトリス・ラジスケ監督は、「選手を誇りに思う。拮抗した試合になった。結果は残念だが、ワールドカップ予選へ向けて参考になる試合になった」と振り返り、「チームは若いし、ミスは修正できる。今後へつながる試合になった」とコメントした。